クラリネット奏者 磯部周平による、メシアン「時の終わりのための四重奏曲」(2010年10月23日のブログより)
マエストローラ音楽院 創業オーナー&理事長の木下尚慈が、過去に綴ったブログを再編し、当音楽院の歴史と魅力や、在籍する講師陣の活躍をご紹介します。
(2010年10月23日のブログより)
昨晩、久しぶりに元NHK交響楽団クラリネット首席奏者であるの磯部周平さんの室内楽演奏会に出かけた。 演目は、バルトーク・べーラの「コントラスト」、ヨハネス・ブラームスの「クラリネット五重奏曲」と、プログラムの中心となったオリヴィエ・メシアン作曲の「時の終わりのための四重奏曲」。
「時の終わりのための四重奏曲」は、メシアンがドイツの捕虜収容所にいたときに『ヨハネ黙示録』に霊感を得て作られた。8つの楽章からなり、演奏時間は1時間近くになる大曲である。 下の写真は、レベッカ・リシン著、藤田優里子 訳の『時のおわりへ メシアンカルテットの物語』から拝借した、ナチス・ドイツの収容所で行われた初演のときの聴衆。
作品を構成する8つの楽章は以下の通り。
「水晶の典礼」として、美しい水晶を絵画的に描いた第1楽章。頭に虹をいただき、太陽のような顔と火の柱の両足をもつ天使が時の終わりを告げる第2楽章。空を自由に飛び、さえずり遊ぶ鳥たちと、空の下に沈む深淵を描いた第3楽章。遊びを楽しんでいるかのような間奏曲(第4楽章)。果てしなく遅く、しかし美しく弾くチェロによって語られるイエスの永遠性(第5楽章)。 『ヨハネ黙示録』にあるような恐ろしい石の響き、激怒の塊、氷の陶酔――変化し続けるもの――世の中に一つと言って同じであり続ける物はない――第6楽章。天使が頭に抱く虹が錯乱し、静寂と錯乱が交互し、超現実的な塊の流れるような第7楽章。そして最後の第8楽章は、ヴァイオリンの長い旋律で永遠と無限を描く。まるで聴衆の一人である私自身が宇宙の中を泳ぎ、次の瞬間には宇宙の彼方に去り、その先でさらに永遠に生き続けるような……キリストによる愛を描いた素晴らしい楽章だ。
磯部さんを囲んだのは、ヴァイオリンの漆原啓子さん、チェロの向山佳絵子さん、ピアノの野平一郎さん。名手4人による1時間近くの演奏が終わった時、拍手の前に静寂な時が訪れた。 非日常の世界に心を運んでくれた、素晴らしい演奏であった。
そして自分自身で非日常の世界を作り出したい方々には、私が運営するマエストローラ音楽院でのレッスン受講をお勧めしたい。先述の磯部さんをはじめ、トップクラスの音楽家として国内外で活躍する講師陣が、様々なインスピレーションを与えてくれることだろう。
若き日のメシアン